雨の日のくじらコーヒー

好きなことをぽつりぽつり。

ねこ下僕


保護猫のお世話をするボランティアをしている。ご飯をあげたり、ケージの掃除をしたり、猫と遊んだりするのが主な仕事だ。


ボランティアのおかげですっかり猫に魅了された私は、どんなに仕事で疲れ果てていてもボランティアにだけは必ず行くようにしている。

「殺処分ゼロ」活動に真剣に取り組み、啓発活動に熱心な人たちに混じり、私もかなり熱心なボランティアに見えるかもしれない出席率の高さだが、私のそれは「猫に触りたい」という自分の欲が活動動機で、啓発するほどの知識はいまだ持ち合わせていない。

ただひたすらに「かわいい子達が1匹でも多く幸せになってほしいなあ」と想っている。


そんな活動の中、かれこれ半年以上引き取り手のない猫がいる。彼は兄妹猫と一緒に保護された。

とても疑り深そうな顔をしている。人に触られるのはあまり好きではないらしく、いつも少し離れた距離で人を観察している。

妹猫も似たような疑り深そうな顔をしていたが、兄猫よりは人間が好きなようで、他の猫のお世話をしていると、ヤキモチを焼いたようににゃあにゃあ文句を言って気を引こうとし、それならと近寄ると、ケージ越しならスリスリするが、ケージを開けるとシャアーッと威嚇するツンツンちょいデレ猫だった。

人にあまりにも懐こうとしないから、2匹はなかなか貰い手がなかった。子猫のうちなら貰い手はわりといるが、2匹は疑り深そうな顔が災いしたのか、可愛いはずの頃合の間には誰からも希望されず、すっかり大きくなってしまい、なおさら貰い手は見つからなかった。


だが、繁殖シーズンが終わって子猫が保護されることがなくなると、あとは少しトウのたった猫たちしか残らない。

それでも、とにかく猫が欲しい人たちは、「子猫じゃないけど...まあ仕方ない」と大人猫を貰ってくれるようになる。このタイミングしか疑り深そうな彼らにはチャンスがない。

私はなぜかこの疑り深そうな兄妹猫が気に入っていた。

だいたい私は「ちょっと変わった子」を気に入る傾向があるので、ボランティア仲間からは「白峯さんが気に入ってるってコトはコイツらはやっぱり問題児だな」と笑われていた。

でも素晴らしいジンクスもあって、あまりの可愛さに私が「ちょっと変わった子」を我が家に迎えようかと真剣に考え始めると、なぜだか急に貰われていくのだ。今までも3回ほど「誰も貰わないなら、私が引き取ろうかしら」と考え始めたら、どんな病気があってもハンデがあっても、突然貰い手が決まっていった。


妹猫も私が「やっぱりあの子は私が引き取ろうかな。貰い手なさそうだし」と思ってすぐ、急に引き取られていった。彼女のツンツンちょいデレが気に入った人がいたらしい。


そして妹よりも疑り深そうな顔をした兄猫が残った。

彼は無理に触ろうとすると本気で噛み付く。だからケージにも「噛むので注意」とプレートをつけられている。

あまりにも凶悪なので、いくら「変わった子マニア」の私でもこの兄猫は自ら貰いたいとは思えなかった。


そんなある日のこと。

ボランティアに出掛けると、たまたま他のスタッフは休みが多くて1人でお世話をすることになった。

猫の数も少なかったので、私は手早く掃除を済ませ、猫達と遊んでいた。

すると。

兄猫がじっとこっちを見ている。何気なく「こっちにおいで」と声をかけてみた。今までも呼んだことは何度かあったが、来たことは一度もない。今回も来ないだろうと思った。


だが。何を思ったか、彼はそろそろと歩いてきて、私の腿横にそっと寄り添ったのだ。


ぅはあっ!


雷に打たれたような、何かに心を射抜かれたような、もう凄まじい衝撃。


もう、何、この子!超絶かわいいんですけど!!


しかもその後、そっと控えめに片足を私の腿に乗せるではないか!

もうダメ!かわいすぎ!ギガかわいい!


そして更なるかわいい攻撃が続く。


彼はしばらく考えた後、おずおずと上半身だけ膝乗りしてきた。


はあーん♡♡


さらにさらに。その20分後、完全な膝乗りをして、ゴロゴロ言い始めたのだ。


もう完全にノックアウト。

かわいさのてんこ盛り。


ねこ下僕はそこから30分、つまるところ1時間近く、疑り深そうな兄猫さまのおかげで幸せな「身動きがとれない」状態になっていた。


かわいい。かわいすぎる。


この子を我が家に迎えたい!!


うちの子にしたいスイッチon!



次のボランティアの日には、ひょっとしたら彼は誰かに貰われていっていないかもしれない。


嬉しい反面、寂しい反面、でもやっぱりそうなってくれると嬉しいのだが...。


※写真の猫は別モノです